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12月, 2019の投稿を表示しています

ひそかにも服喪のこころ年暮れぬ

一周忌までは喪に服す仏教に対して、神道の服喪は50日らしい。しめ飾りは結界を、鏡餅は供物といづれも神道の慣しなら、父が旅立って50日を過ぎたこの歳末に正月の準備をしても亡父は咎めまい。むしろ子孫うち揃って年越しをし、新年を迎えることが大好きだった亡父なら歓迎してくれるだろう。読者のみなさんいつもご愛読ありがとう。明年も手さぐりで新たな旅路を歩んでまいりますのでご交誼のほどよろしくお願いします。 ひそかにも 服喪のこころ 年暮れぬ 飯田蛇笏

花に興味のない女

この場所にこんな花を植えたら可憐な花壇になるのではないかという少女のような想いだけで花屋で花を買い求めた。それをスコップで妻と一緒に穴を掘り植え替えたらどんなに幸福だろうと夢を叶えた。愛情を確かめ合うように列を揃えて植えることができたと見渡したらそうはなっていなかったのは、花に関心がない妻のせいではない。妻とのありふれた日常の距離感を測っているのに、妻の植えた位置に揃えることもできないのが悔しい。

ポリヴェーガル理論入門

じっと座ったままダラダラと詰まらない話を聞かされるより、外へ出て仲間とアイコンタクトしながら遊ぶ方が哺乳類が獲得した高次の迷走神経の訓練に有益だ。トラウマに陥ってしまった人に、遭遇した際の身体的反応を否定させるのではなく、生命の危険を回避した勇気ある反応だと肯定する。自閉症の人には音楽が安全への手掛かりとなる。難解だったが示唆に富んだ作品でした。

秘密基地のチンパンジー

西雀荘完成祝いで友人からいただいた猿のアート。なぜ猿か、なぜこれなのかわからぬままに放置していたら、バンクシーの作品だと娘が調べてくれた。反骨、反権力のストリートアーティスト。麻雀に拘らず音楽を愉しむ秘密基地にふさわしくヘッドホンまで装着しているチンパンジー。これから進化せよと言われているようだ。

贅沢の勉強

酒が入るとついつい声が大きくなるようで、 若い女性など囲む宴卓に隣したら自卓の会話も聞き取れないほどだ。酒は飲めばいいというものではなく「嗜む」のが贅沢だろう。「帰ってきたヨッパライ」を作詞した松山猛の「贅沢の勉強」だ。「だれにも邪魔されぬ時間を、生活の中に持てる者は贅沢である。同様にひそやかな隠れ家たるべき空間を持つ者もまた贅沢である。さらに、日常の発想を、ことごとく実現できる力を持ち得るのは贅沢者である。」

ボクには見えるよ。

1歳のマゴを風呂に入れていたら途中から泣き出した。娘に聞くと、どうやら幼児には大人に見えないものが見えるらしい。亡父か、はたまた守護霊か。翻って我ら大人たちは、なんと愚かにも見えるものしか見ないものか。母から西雀荘の建設費の一部を援助してもらって漸く、母に甘えることも子の優しさであることを悟ったのであった。

サラリーマン生活断層

シルバー人材センターの剪定の師匠に申し出た。「今のままでは会社員、組織の延長線になり、折角組織を抜けた意味を見失う」やる気を買ってくれていた師匠や事務局の方は、組織から組織へ移るだけじゃないかと理解不能だ。どうやらそこには余人には理解しがたい活断層が存在するらしい。世を捨てた訳ではないなら、これはただの人として世間と交わる地殻変動なのかもしれない。

クリスマスイブの約束

亡父が定年後20年以上続けてきた障害を持った幼児の保育園でのサンタクロース。今年で2年目となったが、昨年のようにお母さんたちの笑顔に泣かなくてすみ、ほっと一息。アンパンマンのマーチ、赤鼻のトナカイと2曲ギターを弾きながら合唱したが、子どもた ちがギターの音色を聴くために近づいてきてくれたのは、きっと音楽のもつ力なんでしょうね。

コチョーラン

「おかんがこの花欲しいって」「それは胡蝶蘭や」「隣りにあるのやけど」「胡蝶蘭やないな」「寒さに弱いらしい」「胡蝶蘭や」「赤やピンクのやけど」「それは胡蝶蘭やなくシンビジウムや」「花言葉は清純やて」「なら胡蝶蘭や」「シンビジウムはランやないんか」「胡蝶蘭やないけどランや」「おかんが欲しいのはランや」「なら胡蝶蘭や」「ほなシンビジウムにしとくわ」「ええかげんにしなさい」

土光さんのこと

責任を取るべき事態に際しても地位に恋々とする 人々をみるにつけ 、この人のことを想い出す。年収の大半を母が創立した学園に寄付し、自分の生活費を削ってまでも他人の為にお金を使うことを惜しまなかった。個人の生活は質素に、社会は豊かに、利自ではなく利他の精神がこの人の信条だったという。「人生には予期せぬ落とし穴がついて回る。公私を峻別して、つねに身ぎれいにし、しっかりした生き方をしておかなければならない」心の戒めとしてメザシたいものだ。

完成の法則

着工から1ヵ月ついに裏ドラならぬ裏名称「西雀荘」が完成しました。全自動麻雀卓も鎮座し、早速倅が勤務先の同僚等と徹マン。ニュートンの慣性の法則によると、外から力が作用しなければ、静止している物体は静止したままだし、運動している物体は等速度運動を続けるとか。されば老若男女さまざまな人々の出入りという作用を加えていただいて、心の空き缶を動かす慣性力が働くのを願うばかりです。

まんが日本酒ばなし

退職日には会社の同期入社のみんなとフグ料理を美食し、彼等と別れた後近所の居酒屋で細君とヒラメを肴に美酒に酔った。まさに鯛ではなく「フグやヒラメの舞踊り」となったわけだが、翌朝目覚めて細君にそういうと、「で、おじいちゃんになっちゃったね」 知る人がみな逝ってしまって開けた太郎じゃないが、友を失って自棄になり人生の玉手箱を開けたりしないよう、意外に身近にいた乙姫様の忠告を守りたいもんです。

馬鹿になるといふ事

ていとうていとうと、つづみをうちて、心すましたる声にて、とてもかくても候、なうなうとうたいけり 。入試演習問題でよく目にした一節だが、小林秀雄は続けて 「生きている人 間などというものは、どうも仕方のない代物だな。何を考えているのやら、何を言い出すのやら、仕出かすのやら、自分の事にせよ、解った例しがあったのか。鑑賞にも観察にも堪えない。其処に行くと死んでしまった人間というのは大したものだ。何故、ああはっきりとしっかりとして来るんだろう。まさに人間の形をしているよ。してみると、 生きている人間とは、人間になりつつある一種の動物かな 」 理不尽なめに遭遇したり、不正義に対峙しても馬鹿になるってのは難しいことですね。

妻への感謝状

今日でサラリーマン生活40年を無事に終えることができました。うち32年もの長きにわたり家庭を守ってくれて本当にありがとう。舅姑に仕え、3人の子供を立派に育て上げた功績は感謝してもし尽くせません。身勝手な夫でしたが、これからは君の歩く速度に合わせていっしょに歩いていきたいと思います。よろしくお願いします。

COP 12

妻が前から行きたがっていた居酒屋「大甚」で午後3時に待ち合わせ。すでに別客の老人2人が出来上がっていて、店員の制止も振り切りもう一本もう一本と呑み進め、ひとりが椅子から転げ落ちた。そのうちもうひとりも転げ落ち、ようやく老人たちは店を出たが、店の外で座り込んでいたらしい。テーブルに並んだ二合徳利6本コップ酒にして12杯。そんな賑やかな環境で飲めて幸せでした。(環境大甚)

サラリーマンじゃないし

シルバー人材センターの剪定グループに選定されたのはいいが、覚えるまで辛抱だ、PDCAだ、バリカンの初期投資で4万円自己負担だという。それでも剪定のイロハが分らぬうちは、なんでも是とする覚悟でした。ところが今夜一杯飲んだ女房から、「それじゃサラリーマンと一緒。だったら辞めなければいい」ときつい諫言。たしかにサラリーマンの発想とはおさらばしなきゃいけないんですね。

真実、鈴ふり、思い出す

高校時代、廊下で先生に呼び止められ「どうていを知っているか」といきなり尋ねられた。一瞬顔が赤くなったものの、それが高村光太郎の「道程」であると気づいて愛読する詩だと答えた。 僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る この先麻雀だけでなく、また組織的なものを目指すのでもなく、 人と人との出逢いからなにを創造していけるのか、道程は始まる。

To be,or not to be

国民投票や総選挙までしてEUを離脱する英国。不具合があれば折り合いをつけてでも留まることをしないのは、英国人の思想の根底にシェイクスピアの美学が流れているからだろう。 世人から見れば、禁煙か退職か二者択一の道を選んだ余輩は、差し詰め「ハムレット」ならぬ「シガレット」という名の道化師に見えることだろう。 師匠曰く「吸わないという選択肢はないやろ」

剪定の選定なのだ

いよいよ1月からシルバー人材センターの一員に加えていただくことになり、希望していた剪定グループに配属してもらえた。大手ゼネコンの監督の経歴を持つ70歳のグループ長から授かった心得は、新しい旅立ちを勇気づけてくれました。 ①シルバーだと自分を軽んじてはいけない。銀行員としての経験を忘れず、誇りを持って取り組めば長続きする ②剪定であってもPDCAを回すこと。人の仕事を見て学び創意工夫を重ねるべし。

こころの良薬

古来中国より印鑑入れとして伝わった印籠は、日本で印鑑だけでなく薬籠としての機能も加わったという。20日からは印鑑を持ち歩く必要もないとなると、いかにしてこころの良薬を込めるかに智慧を廻らさねばならぬ。まずは黄門様の言葉だろう。 「国の本はなんと言っても人ですからな。領主であろうが、百姓であろうが人を大切にしないまつりごとはうまくいきません」

ママのリクエスト

故あって20代の頃関連会社に出向したときは、地位も経験もなかった。持っていたのは鼻持ちならない生意気さだけ。分別がついてから知り合った人々からは、退職を聞いて酒場に呼ばれることもないのに、若い自分を知る旧い友人たちが再出発を祝ってくれた。 ♬昔の友にはやさしくて 変わらぬ友と信じ込み あれこれ仕事もあるくせに 自分のことは後にする

なつかしい痛みだわ

恋をすると胸が痛んだのを覚えている。3ヶ月かけての105社120名ほどの先輩、後輩との引継挨拶もやっと最終盤。会ったこともなかった先輩までも、一人残らずわざわざ時間を割いて会ってくれた。81歳の最高齢の方を筆頭に、共通している人となりは、愛社精神と惻隠の心で、それが「なつかしい痛み」として心に染みる日々でした。やはり私は会社に恋をしていたんですね。

ゲツヨウビの約束

目下から目上に杯を差し出すのが「献杯」、目下が目上に杯を求めるのが「お流れちょうだい」。そのままじゃ失礼だと杯を水で洗ってやり取りする行為を「杯洗」というのだそうだ。 夫婦や家族のように親しい間柄では杯洗の必要がないから、「水入らず」という言葉が生まれたらしい。姑が不在の月曜日の夜は、このところ毎週女房と水入らずで居酒屋巡りしています。

煙管の物理学

茶店や宿部屋でうまそうに煙管で一服する副将軍。あの時ご隠居はなにを考えているのだろう。始業から終業まで一心にパソコンを見つめ、電車内ではスマホに首ったけ。 風を感じて見えない空気の存在や自然の摂理を体感するように、一服する行為で悠久の時の流れを感じるのではあるまいか。時は金ではない、幸福である。

君たちはどう生きるか

君たちは失敗をしたくないと思っているね。でも、成功したければ「失敗」しなければならないんだ。失敗するのには小さな勇気が必要なんだ。けっして大きな勇気ではない。電車の中で老人に席を譲ったり、街角で目に留まったゴミを拾う勇気だ。 そして「逆境」は乗り越えるものと思っていないだろうか。乗り越えようとしなくていい。自分を成長させるものだから、受け容れて小さな努力を重ねよう。それが人生を豊かにするんだ。

300ー500

女房、倅の3人で大面商会へ行って業務用全自動雀卓70万を注文。ご苦労さん会を兼ねて酒津屋、鳥勢と梯子酒。 女房が倅の着ているTシャツにプリントされてる300-500の数字に気づいた。「子が自ら積もって上がった時の最小点数。小さいけれどコツコツ積み上げるんだ」と倅。その意気大いによし。当小屋の入口にそのTシャツを暖簾のごとく掲げ、考えあぐねていた小屋の正式名称とすることにしました。

悠々として急げ

いいですね。これから悠々自適で、などと言われるが、開高健は「festina lente(ゆっくり急ぐ)」というラテン語の古語を愛した。元々はある王様の治政の座右銘だっと伝えられるが、衆庶の日常の必須心得ともしたいと言っている。 「余技ってのはもともと授業料を払うものなんだよ。元金をウンと注入しなければ利息が出てこないんだ。ところが、しばしば利息をあせるために元金が喰われるということがある。だけど、喰いこんだ元金の物凄さが今度は利息になって戻るという不思議な循環体系が情念の世界にあるのも事実やね」

老兵はただ消え去るのみ

智力もあり体力も備えた若い人は現場の最前線で命を賭して闘えるが、老兵は智力にも体力にも持続性が失われ最前線に立つこともない。 老兵にできることといえばせいぜい後方支援だ。だがそれもそのうち弾丸を逆さまに装填したり、手垢のついた古びた戦陣訓を語って足手纏いになってくる。勢い老兵にできるただひとつの貢献は、命を賭して闘うことではなく、「静かに消え去ること」のみになるのである。 10日後に40年間のサラリーマン生活を終えようとしている自分の最期の矜恃であるともいえる。

部屋と鉄板と私

部屋の壁に麻雀のルールや催事案内を掲示するのに、画鋲で穴を開けたくないということで、クロスの下に鉄板を貼ってもらうことになった。 そこへ倅が、全自動雀卓を家庭用から業務用にグレードアップして、30万以上追加支出したいと言いだしてきて、平松愛理より「およげたい焼きくん」の歌詞が頭の中を流れるのであった。

本音の建前

本日無事建前終了しました。 頑丈な柱が林立して、なんだか新しい自分の城が立つような感覚です。 禁煙を理由に会社を辞めると聞いた人から、「それは建前でしょ」と言われるのですが、本当にそうだと信じてもらうのは容易ではありません。 建前で上げられた棟に恥ずかしくないように、己も胸を張りたいものです。

草枕で旅寝するか

いよいよ資材が搬入されて建前までブルーシートに覆われた。 構想から5カ月。警察に相談に行ったり、廃業する雀荘へ倅と軽トラに乗って備品を譲り受けに行ったりと、いろんなことがあった。 会社も19日で終わるつもりなんで、21日の完成引渡し日にはただの麻雀小屋の管理人になる。夏目漱石の草枕だ。「人の世を作ったのは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣にちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国に行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくいところをどれほどか、寛容て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。」