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投稿

大菩薩峠 (一)

大正時代に創られ発表された名作だが、まるで講談を読むかのように楽しめる。主人公机竜之介がとんでもない虚無と悪事に絡みとられた人物であるにもかかわらず、なぜか魅力的なのは、作者中山介山の筆力によるものに違いない。未完の大長編の第一作で、続編を読まずにはいられないのだが、まずはここで一区切りとしておこう。(568/1000)
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三鬼

西東三鬼なる奇妙な俳号をもつ俳人がいたことは知っていたが、まさかその斉藤敬直がシンガポールを拠点にして華僑やインド人、イスラム人と深い繋がりを持つ先祖の後裔で、軍部と特高の間で翻弄される運命にあった人だったとは驚きである。初代特高部長の安倍や、山下奉文のおどろおどろしい実像に加えて、高浜虚子の文学観も興味深く読める一冊であった。(567/1000)

鞍馬天狗傑作選①角兵衛獅子

あまりに有名な「鞍馬天狗」だから、その原作となれば麗麗たる文体の時代小説かと手に取ってみれば、豈図らんや児童文学であった。角兵衛獅子、杉作とは、鞍馬天狗というヒーローを子供の目線で捉えるための主人公であったというわけだ。大佛次郎とは面白い作家である。(566/1000)

日蓮

親鸞を読んだ時に比べると、やはり違和感を禁じ得ない宗派と言わざるを得ない。法華経がいかに素晴らしいと理解したとしても、他宗を全て頭から否定するというのではいかにも普遍性は持ち得ないだろう。ユダヤ教がキリスト教を否定するように、キリスト教がイスラム教と相容れないように、別個の信仰も受け容れない思想とはいかがなものか。(565/1000)

赤穂浪士

2段組800ページに及ぶ大部だったが、一気に読破できたのは、あまりにも人口に膾炙した物語だというだけでなく、作者らしい視点の鮮やかさだろう。元禄時代に頽廃しつつある武士道に、一方は義挙を通して反撃を鳴らし、市井や浪々の境涯に生きる者には寧ろ虚しさをもたらす。改めて現代の視点でも跡を辿る価値のある史実に違いない。(564/1000)

ベトナム戦記

NHKの放送で開高健のベトナム体験が紹介されたのを受けて、「輝ける闇」とこの本を借り受けた。前者を3分の2ほど読んだところで、すでに読んでいたことに気づいてまた細君に笑われた。後者のこの本は毎日出版文化賞をとった前者に比べて、ルポルタージュとしての迫真さは強烈だ。戦争の無意味さを改めて知ることのできる作品だ。(563/1000)

菊と刀

菊と刀というからには、菊は天皇を、刀は戦前日本人の武士の魂を象徴するタイトルに依拠する内容かと思いきやそうではなかった。菊に輪をはめ自由な生長を矯める栽培方法を日本人の「恥、義理、義務」に擬える。刀は「身から出た錆」という諺通りに、日本人が「自ら責任を取る」という信念で敗戦を受け止めることを喩える。日本人に特有の国民性をよく理解できる名作であった。(562/1000)