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欺す衆生

豊田商事の詐欺事件を題材に、その残党がその後もいかにしてさまざまな詐欺にかかわり、裏社会の連中や政治家等と結びついてきたのかを告発する物語だ。結末は当然自滅だろうと思いきや、あらゆる難局を切り抜けて「人生そのものが詐欺のようなものだ」と読者に思わせる。人が人を欺し、組織が社員を、国が国民を欺す。昨今の政局を見るようだ。(557/1000)
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重力ピエロ

いったい物語はどこへ向かうのかと思いながら読み進む。短い章立てがくるくるとストーリーを展開させ飽きさせないが、逆に方向性が掴みきれないという新たな手法かもしれないと思い直す。遺伝子のメカニズムやガンジーを始めとする偉人の名言に囲まれながら、物語はラストシーンを迎える。まさに無重力感を味わえる作品かもしれない。(556/1000)

戦場のベーカリー

翻訳ものは、原作は素晴らしくても、日本語との親和性がないためか、翻訳者が原文に束縛されすぎるのか、実に読みにくい。それでもウクライナの現状と、流浪と征服の被害者であり続けた民族の逞しい思想は読み取れた。日本が同じ立場になったとしたら、と思うと今からでも少しは学んでおくべき食の思想がここにある。(555/1000)

法華経 (上)

宮沢賢治が信奉して著したという「国訳妙法蓮華経」は手に入らないので、岩波文庫版の「上」だけを覗いてみた。漢文の経典はさぞ読みにくかろうと思いきや、丁寧な口語訳が左辺に付されていて、意外にすらすらと読めたのが意外であった。機会があれば中、下も手にしてみてもいい。(554/1000)

天路の旅人 (上)(下)

戦前から敗戦後まで約7年にわたって中国大陸から、モンゴル、チベット、ネパール、インドまで密偵として旅をした西川一三の物語だ。あまりにも過酷な、それでいて柔軟かつ変幻自在な適応力をもって難局を乗り切る人間ドラマは感動的だ。旅を愛する沢木耕太郎だから辿れた男の旅路だ。(553/1000)

深夜特急1

沢木耕太郎の「深夜特急シリーズ」の第1巻だ。「旅する力」でその動機やおおよその行程は把握できていたつもりだったが、実際の香港、マカオの道中は実に面白く読める。26歳にしてこんな破茶滅茶な一人旅がよくできたものとだと、10歳年上の先輩作家に敬意を表したくなる。(552/1000)

あん

ハンセン病についてテレビで改めて問題意識をもって手に取ったのだが、読み出してからそういえば映画化されたこの作品を観ていたことを思い出した。映画の細部は忘れていたが、小説として文字を辿ることで、差別の残酷さと生命の意味について思い至ることができたような気がする。(551/1000)