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親鸞 (上)(下)

教行信証に触発されて五木寛之版の上下巻を手に取った。新聞に連載されていた頃には読む余裕がなかったせいか、今読んでみる方が相応しいと思えるのも奇妙だ。十悪五逆を犯したものは念仏を唱えても浄土へは行かないとする無量寿経から、他力によってそういう人々も救われると解する涅槃経へと法然の思想を止揚させる親鸞。その辺りの事情はこの上下巻には著されていない。(559/1000)

「教行信証」を読む

親鸞が著した「教行信証」(岩波文庫版)を原文で読んでみようと挑んだが、仮名交じりの漢文ではとても読解不能で、本書となった。教、行、信、証、真仏土、化身土の六部で、師である法然の説いた念仏では救われない悪業の徒の救済について探究する。自力修行から自力念仏、他力念仏へと進むプロセス。その方法論を多少は楽しめた気がする。(558/1000)

欺す衆生

豊田商事の詐欺事件を題材に、その残党がその後もいかにしてさまざまな詐欺にかかわり、裏社会の連中や政治家等と結びついてきたのかを告発する物語だ。結末は当然自滅だろうと思いきや、あらゆる難局を切り抜けて「人生そのものが詐欺のようなものだ」と読者に思わせる。人が人を欺し、組織が社員を、国が国民を欺す。昨今の政局を見るようだ。(557/1000)

重力ピエロ

いったい物語はどこへ向かうのかと思いながら読み進む。短い章立てがくるくるとストーリーを展開させ飽きさせないが、逆に方向性が掴みきれないという新たな手法かもしれないと思い直す。遺伝子のメカニズムやガンジーを始めとする偉人の名言に囲まれながら、物語はラストシーンを迎える。まさに無重力感を味わえる作品かもしれない。(556/1000)

戦場のベーカリー

翻訳ものは、原作は素晴らしくても、日本語との親和性がないためか、翻訳者が原文に束縛されすぎるのか、実に読みにくい。それでもウクライナの現状と、流浪と征服の被害者であり続けた民族の逞しい思想は読み取れた。日本が同じ立場になったとしたら、と思うと今からでも少しは学んでおくべき食の思想がここにある。(555/1000)

法華経 (上)

宮沢賢治が信奉して著したという「国訳妙法蓮華経」は手に入らないので、岩波文庫版の「上」だけを覗いてみた。漢文の経典はさぞ読みにくかろうと思いきや、丁寧な口語訳が左辺に付されていて、意外にすらすらと読めたのが意外であった。機会があれば中、下も手にしてみてもいい。(554/1000)

天路の旅人 (上)(下)

戦前から敗戦後まで約7年にわたって中国大陸から、モンゴル、チベット、ネパール、インドまで密偵として旅をした西川一三の物語だ。あまりにも過酷な、それでいて柔軟かつ変幻自在な適応力をもって難局を乗り切る人間ドラマは感動的だ。旅を愛する沢木耕太郎だから辿れた男の旅路だ。(553/1000)

深夜特急1

沢木耕太郎の「深夜特急シリーズ」の第1巻だ。「旅する力」でその動機やおおよその行程は把握できていたつもりだったが、実際の香港、マカオの道中は実に面白く読める。26歳にしてこんな破茶滅茶な一人旅がよくできたものとだと、10歳年上の先輩作家に敬意を表したくなる。(552/1000)

あん

ハンセン病についてテレビで改めて問題意識をもって手に取ったのだが、読み出してからそういえば映画化されたこの作品を観ていたことを思い出した。映画の細部は忘れていたが、小説として文字を辿ることで、差別の残酷さと生命の意味について思い至ることができたような気がする。(551/1000)

テロルの決算

社会党委員長浅沼稲次郎と彼を刺殺した17歳の山口ニ矢(おとや)の両名を追ったドキュメントだ。それぞれの人生を丹念に辿ってくれているので、時代背景とともに、なぜこのような悲劇がもたらされたのかがよく理解できる。思想とは?信念とは?人が人として生きることの難しさを感じざるを得ない。(550/1000)

線量計と奥の細道

ドリアンさんの「くさい」奥の細道分析などと侮ってはいけない。自ら愛車「メグ号」(折り畳み自転車)を操り、時には友人たちの車にも助けられながら、東日本大震災で放射能汚染を見舞われた福島や宮城をはじめ、芭蕉の辿った奥の細道コースを線量計で計測しながら踏破する。忘れてはいけないあの悲劇、そして原発問題。アメリカとイランの交渉の行方も過ぎる。(549/1000)

深夜特急ノート 旅する力

思えば自分も若い頃、作者ほどではないにしろ国内の遠い地へ一人で旅をしたものだ。「旅には適齢期がある」「自分に不足しているものを知る機会になる」「旅は作るものだ」といった至言がスタンと腑に落ちるのもそういう経験が少しはあったからだろう。古稀を迎える歳になって今更ひとり旅などできないが、そういう気概だけは保ちたいと思わせてくれる一冊だ。(548/1000)

寂しさから290円儲ける方法

ドリアン助川というのは、明川哲也という本名にもかかわらず、書いた詩を「君の詩はくさい」と言われたためだそうだ。岩崎宏美の「許さない」、太田裕美の「道」、ブレッド&バターの「ペガサス」を作詞している。聴いてみると確かにちょっと「くさい」かもしれない。ラジオのパーソナリティの縁でか「人生相談の仕事」しかこなくなったという来歴を知って読むと面白い。(547/1000)

春かずら

読書評を目にして手にした一冊だったが、400ページを超えたあたりからやや冗長すぎる結末のくだりが面倒だった。随所に人生の教訓を読み取らせてくれる一方、作者ならではか女性の描き方に違和感があるのはやむを得ないかもしれない。なかなか良書に巡り会えないと感じるのは、重ねた年齢のせいか?(546/1000)

マテニ10号 (上)(下)

北朝鮮を『地上の楽園』と偽装して、何人もの在日コリアンを不幸な国の犠牲にした物語を読んだ後だけだけに、戦前の日本統治下で虐げられた三代にわたる鉄道員一族の話も無知なるが故に強烈な読後感を残してくれた。作者は異なるが、こうした一連の作品が読み繋がれることが、今日尚繰り返される民族の争いや偏狭な対立に一石を投じてくれないものだろうか。(545/1000)

西行

小林秀雄の「無常と云ふこと」に収められた「西行」を読み返したのは5年前だったが、今また今度は白洲正子による「西行」に触れてみて、西行の人間としての奥深さや魅力に改めて思い至る。宮中における歌人との交際や保元、平治の乱、源平合戦、承久の変と移り変わる乱世とも隔絶して自らが求める数奇の道を全うした一生に学ぶべき点は少なくない。(544/1000)

地上の楽園

右傾化しつつあるこの国で、いつ発禁処分になっても不思議ではないほど強烈な歴史上の告発書だ。まだまだ日常的に差別用語が使われていた昭和30年代に生まれた我々にとって、かくも非人道的な行為が国家としても、国民としても見過ごされ蓋を被せられていた事実に愕然とする。人間とはほとほと救いようのない存在なのだろうか。(543/1000)

鹽津城

なんとも不思議なSF小説である。全6編、理解できるものもあれば、意図がよくわからない内容のものもある。表題作に関して言えば、過去と未来が交錯して戸惑いはするものの、津波に襲われた我が国の悲しい体験を思うと、はるか500年先の未来に今世紀のそれがどう伝わるのか想像を迫られる。(542/1000)

粒と棘

戦後生まれで自分より若い作家なのに、よくぞここまで戦後間もない時期の日本社会の闇と歪みを描き出してくれたものだと驚く。何の因果関係もない6編の小作かと読み進んでいくうちに、それらが全て繋がっていく構成に舌を巻く。今の日本はやっぱり平和なんだなと改めて思わざるを得ない。(541/1000)

警察医の戒律

かなり初期の作品なのだろうか。「テミスの不確かな法廷」に比べるとかなりストーリー展開に気負いというか無理さが窺えて、なかなか読み進むのに難渋する。法医学者という職業にスポットを当てた視点は斬新だが、今再び描き直すとしたら、もう少し違った作品になったかもしれない。(540/1000)