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6月, 2024の投稿を表示しています

臨時廻り同心 山本市兵衛

雲をつかむ男、毒茸、牙貸し、老剣客と女弟子の四話で構成されているが、いづれの話も実に洗練されており娯楽性も深い。こんな実力ある時代小説作家がまだまだいることに安堵さえ思える。お気に入りの作家が鬼籍に入った人ばかりでは寂しい。どんどん書き続けて欲しいものだ。(434/1000)

思案橋

初めて手にする作家だが、「知らぬが半平衛手控帖」シリーズのひとつとはいえ、単一作品として充分に読み応えがある。「世の中には知らない方がよいこともある」と喝破する同心、白縫半兵衛の人情裁きに思わず喝采を送りたくなる。浮世の荒んだ人と人との交わりに疲れたら一読すれば一服の清涼剤となるだろう。(433/1000

三河雑兵心得⑦ 伊賀越仁義

穴山梅雪は、家康と間違われて殺されたという通説を取らず、光秀に従おうと京に向かったところを野伏に弑逆された説を立てる。本多兵介を家康に見立て平八郎等ととともに、家康と別ルートで伊賀越えを果たす植田茂兵衛。架空の人物としても、充分伊賀越えの醍醐味が味わえる。(432/1000)

夜は短し歩けよ乙女

なんとも奇想天外というか荒唐無稽な小説だ。自身が京大農学部に在籍した当時の恋愛体験を辿ったものかどうかは不明だが、還暦過ぎたジジイには読んでもピンとこない。青春のほろ苦さだけはなんとなく伝わってくるが、これだけの語彙力があるのなら、もっと違った構成を試みるべきだったろう。(431/1000)

介護者D

現実に母の介護を受け入れなければならない状況になって、この本を読んでみると、亡父を心ならずも施設に入れて看取った後悔とないまぜになって、今後の母の処遇について心は千々に乱れる。肉親の最期を看取る子のあり方として、優等生Aの処方箋は無理でも、D評価であっても肉親への感謝の想いが伴えばそれで及第点だと納得できる作品だった。(430/1000)

会津執権の栄誉

会津についていろいろ知りたいという欲求があったところに、新人の作家が著した同書に遭遇した。6つの章立てが一本の筋で繋がっており、滅ぼされた芦名家の家臣たちのエピソードに加え、滅ぼした側の伊達政宗によって最後は締め括られる。どのエピソードの視点も斬新で鮮烈だ。推奨の一冊だ。(429/1000)

友よ

友よ、と繰り返し行動原理を説かれてもいささかピンとこないのだが、元親の後継者である信親が若干22歳の若さで島津軍との戦いで命を落とした歴史的事実に基づくものだと知れば興味も掻き立てられるかもしれない。現代的な観念ではなく、歴史的な視点で描いて欲しかった作品だ。(428/1000)