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黎明に起つ

北条という姓は早雲亡き後、子孫が名乗ったそうで、物語では最後まで伊勢(早雲改名前は新九郎)として最期を迎える。信長や秀吉の軍略や治世術ももしかしたら彼が先鞭をつけたのではないかと思わせるほど斬新だ。人が生きる時代とは自分で選べないという厳然たる法則が、当然でありながら悔しいと思える早雲の一生だった。(296/1000)



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亥子ころころ

久しぶりの西條奈加だったが、『まるまるの毬』に勝るとも劣らない出色の出来栄えの作品だ。しかも毬(いが)を継いでの亥子なのだから興趣を掻き立てられる他ない。毬も菓子職人、本作も菓子職人にまつわる親子、師弟、友人の人情と憐憫を扱い、胸を突くシーンは縦横無尽だ。名作に出会える喜びに浸れるのはなんとも贅沢だ。(458/1000)

三河雑兵心得⑦ 伊賀越仁義

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運転者 未来を変える過去からの使者

たまたま倅が職場で必要な代物をなくしたみたいだと細君から聞いた。始末書を書くのもいい薬だと思って納得したが、結局同僚が拾ってくれていたそうでことなきを得たのは、運が悪いのではなく貯めていた運を使わせてもらったということになる。そういう話がこの物語を構成していて、読むほどにじわーっと心が温まる名作だ。(399/1000)