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その男 (ニ)(三)

杉虎之介という主人公の名前は吉田松陰の幼名を充てたもののようだ。幕末から昭和まで98年の生涯を送った主人公が、屈指の剣豪としてだけではなく西南戦争で西郷や桐野の最期までを見届けた人であったことが、複数のモデルを重ねたにしろ物語に重厚さを加えている。江戸期までの日本人とは黒白だけで判断せず、理屈よりも情で物事を考えたことを尊びたいものだ。


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カナリア恋唄

こんな素晴らしい作家に巡り会えて、それが読書の醍醐味だと大啖呵を切ったあとに、まさか本作がこの作家の遺作であったと知るとは。2015年62歳でこの世を去っていたという。つまりこれ以上彼女の作品は読めないのだ。人生とは須臾の間だと登場人物に奇しくも語らせた如くに、彼女は風のようにこの世から去ってしまったのだった。なんと残念なことだろう。(530/1000)

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