騏驎も老いては駑馬に劣る 5月 29, 2020 愚痴のようだが自分の倅のような若い社員から物知り顔であれこれ指図されることに辟易とする。どうせ俺は1年しか世話にならぬと腹を決めているから我慢するだけだが、経験を積んだ老人が実社会で貢献するというのはそんなに容易いことではないとよくわかる。畢竟誰に対しても頭が下がり謙虚になるしかないから、これも隠居生活の深化に必要な試練だと弁えるとしよう。世阿弥は「風姿花伝」の中で父観阿弥について「(老年期は)さりながら、まことに得たらん能者ならば、物数は皆失せて、善悪見どころは少なしとも、花はのこるべし」と記したそうな。今更ながらそれを背中で示していた亡父が偲ばれる。 共有 リンクを取得 Facebook × Pinterest メール 他のアプリ 共有 リンクを取得 Facebook × Pinterest メール 他のアプリ コメント
亥子ころころ 10月 15, 2024 久しぶりの西條奈加だったが、『まるまるの毬』に勝るとも劣らない出色の出来栄えの作品だ。しかも毬(いが)を継いでの亥子なのだから興趣を掻き立てられる他ない。毬も菓子職人、本作も菓子職人にまつわる親子、師弟、友人の人情と憐憫を扱い、胸を突くシーンは縦横無尽だ。名作に出会える喜びに浸れるのはなんとも贅沢だ。(458/1000) 続きを読む
三河雑兵心得⑦ 伊賀越仁義 6月 18, 2024 穴山梅雪は、家康と間違われて殺されたという通説を取らず、光秀に従おうと京に向かったところを野伏に弑逆された説を立てる。本多兵介を家康に見立て平八郎等ととともに、家康と別ルートで伊賀越えを果たす植田茂兵衛。架空の人物としても、充分伊賀越えの醍醐味が味わえる。(432/1000) 続きを読む
運転者 未来を変える過去からの使者 2月 22, 2024 たまたま倅が職場で必要な代物をなくしたみたいだと細君から聞いた。始末書を書くのもいい薬だと思って納得したが、結局同僚が拾ってくれていたそうでことなきを得たのは、運が悪いのではなく貯めていた運を使わせてもらったということになる。そういう話がこの物語を構成していて、読むほどにじわーっと心が温まる名作だ。(399/1000) 続きを読む
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