スキップしてメイン コンテンツに移動

沈黙の春

今から60年も前に出版された科学書。よくもこれだけさまざまな文献や事象を渉猟したものだと感心する。第二次世界大戦当時に開発された生物化学兵器に端を発し、DDTを始めとする殺虫剤がいかに自然界のバランスを破壊し、人間にも健康的被害を及ぼしているかをこの時代に洞察している。コロナウィルスももしかしたらそういう自然界の不均衡から生まれたのだとしたら、細菌を退治することだけでなく我々のライフスタイルそのものを見直さねばならないかもしれない。

コメント

このブログの人気の投稿

亥子ころころ

久しぶりの西條奈加だったが、『まるまるの毬』に勝るとも劣らない出色の出来栄えの作品だ。しかも毬(いが)を継いでの亥子なのだから興趣を掻き立てられる他ない。毬も菓子職人、本作も菓子職人にまつわる親子、師弟、友人の人情と憐憫を扱い、胸を突くシーンは縦横無尽だ。名作に出会える喜びに浸れるのはなんとも贅沢だ。(458/1000)

三河雑兵心得⑦ 伊賀越仁義

穴山梅雪は、家康と間違われて殺されたという通説を取らず、光秀に従おうと京に向かったところを野伏に弑逆された説を立てる。本多兵介を家康に見立て平八郎等ととともに、家康と別ルートで伊賀越えを果たす植田茂兵衛。架空の人物としても、充分伊賀越えの醍醐味が味わえる。(432/1000)

運転者 未来を変える過去からの使者

たまたま倅が職場で必要な代物をなくしたみたいだと細君から聞いた。始末書を書くのもいい薬だと思って納得したが、結局同僚が拾ってくれていたそうでことなきを得たのは、運が悪いのではなく貯めていた運を使わせてもらったということになる。そういう話がこの物語を構成していて、読むほどにじわーっと心が温まる名作だ。(399/1000)