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銃・病原菌・鉄 (上)(下)

なぜ文明は肥沃三日月地帯からユーラシア大陸には素早く伝播したのに、南北アメリカ大陸やアフリカ、オーストラリア大陸では滞ったのかを人類1万3000年の歴史に遡って探求する上下巻600頁に及ぶ大部。食料生産の栽培化、哺乳動物の家畜化、各大陸の地理的条件等からその要因を解き明かすのだが、わけても先住民が滅ぼされる原因のひとつが豚に起因するインフルエンザ等の疫病だという事実は今日的だ。幅広い言語学への造詣、歴史認識はさすがピューリッツァ賞を得ただけのことはある。

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ふるさと銀河線

全9篇の短編集だが、その全てに鉄道が絡まるのがうれしい。寺山修司の詩が引かれているが、全編を通じてその詩魂が宿っている気がする。 幸福が遠すぎたら さよならだけが 人生ならば また来る春は何だろう はるかなはるかな地の果てに 咲いている野の百合何だろう さよならだけが 人生ならば めぐりあう日は何だろう やさしいやさしい夕焼けと ふたりの愛は何だろう さよならだけが 人生ならば 建てたわが家は何だろう さみしいさみしい平原に ともす灯りは何だろう さよならだけが 人生ならば 人生なんか いりません (484/1000)

迷路 (上)(下)

戦前の昭和11年に「黒い行列」として刊行され、戦時色の推移により中断、戦後の昭和31年に「迷路」として完成した1,200頁に及ぶ大作だ。岩波文庫らしく書き出しは難読だが、読み進むにつれファシズムに向かう時代の狂気や青年の心の彷徨、権力者たちのエゴイズムが大団円として描かれる。すごい作家がいたものだ。(495/1000)

罪の声

ようやく5年半をかけて500冊に到達した。区切りの一冊は映画化された同書だが、映画とは細部が微妙に異なるだけでなく、文字から伝わる感動はまた別物だ。グリコ森永事件の真相を独自解釈した構想も壮大だが、なんといっても加害者側に組み込まれた子供たちの運命に焦点を当てた作者の視点が作品に普遍性を与えている。(500/1000)