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7月, 2024の投稿を表示しています

断絶

なかなか落ち着いて読書ができない日々が続いていたが、細君が手持ちしていた蔵書から漸く一冊取り出して読了できた。政治家とその一族が絡む殺人事件を描いた推理ものだが、ああこの作家ならと頷ける筆力だ。今年も後半戦、60冊に手が届けば500冊も見えてくる。(439/1000)

青い壺

なんの変哲もないのに、たまたま出来よく仕上がった青磁の壺が、作者の手から次々と人手に渡り転々とする。手にしたそれぞれの人々が、なんの価値さえ見出さない代物であるのに、最後に外国で手に入れた鑑定家が作者に見せて年代物だと言い張る結末が実に愉快だ。人生も物質も世の変遷という運命を免れないということか。(438/1000)

無間の鐘

おどろおどろしいタイトルだが、読み進めば内容は人間の業を汲み取って深い。六編の物語がひとつの鐘に結びついて、人間の欲のあり様をまるで鐘をつくように描き出す。最終話では前章までの挿話が大団円となって収束するのが痛快である。(437/1000)

裁判官三淵嘉子の生涯

朝ドラ「虎に翼」の原作のようだ。ドラマでは仮名となっているそうだが、日本初の女性裁判官の一人、家庭裁判所長しか務めさせてもらえなかったが、家庭裁判所の母としての一生だ。男に伍して対等に渡り合っていく生き様が潔い。一方退官後は不治の病に侵され短すぎる生涯を閉じたのがなんともやらせない。 (436/1000)

実は、拙者は。

実は、実はと登場人物が次々と裏の役目を担っていたり、極悪人だったりしていく。いささか出来すぎた展開だと首を捻りたくなりながらも、読本のように愉快に読み進めてしまう。水戸黄門や暴れん坊将軍のドラマが安心して観られるのと同様に、結末に不安のないエンターテイメント時代小説だ。(435/1000)