不慮の事故で突然帰らぬ人となった故人の葬儀へ駆けつけたからには、この恩人についての忘れがたい想い出を小欄に書き留めておかねばならない。長文御容赦。
世間知らずで干されて関連会社へ出向して3年後本体へ戻った。その間のブランクを取り返そうと必死になって成績地区一番を獲得した。
地区を統括するその干した支店長から、成績は偶々だから表彰から外せと難癖がついた。さにあらず、本当に努力した結果だと庇ってくれて表彰を受けさせてくれたのがその故人だ。
地区の表彰式で、お前のはフロックだ、2回連続取ったら注いでやるとビールも注いでくれなかった当該支店長。屈辱に耐え翌期も見事獲得、本部表彰を受けることになった。表彰式に本部へ行く際、式が終わったら電話しろと故人から厳命されて送り出された。
友人達と飲みに行くつもりだったのに、なんと無粋なと思ったが電話すると、「誰か飲みに行く相手はいるか?そうかいるか。ならいい、しっかり飲んでこい」と返してくれた故人。
電話口で思わず胸が詰まったことも思い出し、泣きながら見た棺の中で安らかに眠る故人の顔はまるで弥勒菩薩が微笑んでいるかのようであった。
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