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妻の背中

定年後細君と歩いていてどうも気になっていたのが、ふと気がつくと彼女が夫より前を歩いている瞬間だ。かつてはどんなに広い道でも彼女は後ろを歩いていたはずだった。並んで歩いていても狭くなれば進んで後退したはずなのに、今では押しのけるかのように前に出る。だが考えてみれば7つも年上の夫は彼女からすれば労わるべき老人なんだろう。妻の背中に描かれた千変万化の絵巻物でも眺めながら歩くとしよう。



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