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亀の甲より虫の幸

窓口で若い同僚を相手にわめき散らす老人。いい歳をして嘆かわしい限りで、何が亀の甲より年の功だなどと憂いにふけりながら家路に着く道すがら、一羽の体長豊かな鳥が目の前に降り立った。突然の登場にこちらも驚いたが鳥も驚いたようで、飛び去る軌跡に慌てぶりがよく表れていた。ふと見ると、小雨のそぼ降る中地面を這いつくばって歩む虫がいるではないか。そうか、彼は私が通り掛からなかったら鳥の餌食になっていたのかと思い至った。人の一生というものもそういうものなのかもしれない。


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