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あい 永遠に在り

実在の人物だそうだ。だそうだどころか、若かりし頃読んだ司馬遼太郎の「胡蝶の夢」にも関寛斎という稀代の名医が取り上げられていたらしいのだから、小生の読書"記憶"も怪しいものだ。「人たる者の本分は、眼前にあらずして、永遠に在り」というヤマサ醤油七代目濱口梧陵の言葉に忠実に生きた関寛斎夫婦の一生はまさに永遠の軌跡だ。(486/1000)
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出世花

亡父、亡母の湯灌に遭遇した際に、肉親への慈しみより聖なる儀式への侵略ではないかとの躊躇いが己を遠ざけさせた。本書を読んでそれを後悔することもあろうが、実は湯灌をお願いした方々が肉親に死者の「安らぎの表情」を見せてくれるための重要な儀式なのだということがよくわかる。出家という意味での出世をこれから目指したいものだ。(485/1000)

ふるさと銀河線

全9篇の短編集だが、その全てに鉄道が絡まるのがうれしい。寺山修司の詩が引かれているが、全編を通じてその詩魂が宿っている気がする。 幸福が遠すぎたら さよならだけが 人生ならば また来る春は何だろう はるかなはるかな地の果てに 咲いている野の百合何だろう さよならだけが 人生ならば めぐりあう日は何だろう やさしいやさしい夕焼けと ふたりの愛は何だろう さよならだけが 人生ならば 建てたわが家は何だろう さみしいさみしい平原に ともす灯りは何だろう さよならだけが 人生ならば 人生なんか いりません (484/1000)

銀ニ貫

室町時代に現れた羊羹は小麦粉に葛粉を混ぜた蒸し羊羹だったらしい。水分が多いため日持ちしなかったそうだが、江戸期になって京都の駿河屋が寒天を用いて練り羊羹を何代にも渡って工夫して拵えたという。この作品では舞台を大阪に設定し、武家に生まれた鶴之輔改名して松吉が蒸し羊羹を開発するまでを描く感動長編だ。(483/1000)

あきない世傳 金と銀 源流篇

ドラマ化されていると聞いて手に取ったのだが、いい意味で予想を裏切るこころ温まる作品だった。なんといっても主人公の「幸」の存在が際立っている。「知恵」は人に生きる力を与えてくれる。さまざまな人生の苦境に遭遇しても、その一途な願いを胸に直向きに生きる少女が健気だ。 (482/1000)

雷桜

映画にもなったようだが、まったく知らなかった。この作者の短編集「余寒の雪」があまりにも秀作であったので、手に取った長編であったが、期待を裏切らない作品だった。徳川10代将軍家斉の子として生まれた斉順をモデルにしたという斉道を軸に、遊という瀬田に生まれた宿命の女性との出会いと別れを描く。途中涙を誘われる場面が多いのには本当に参る。(481/1000)

おれの足音 (上)(下)

下巻から読んで上巻に達して読んだのだが、少しも違和感がない。あまりにも人口に膾炙した歴史上の事件だからなのか、筆者の巧みな語り口によるものなのか。内蔵助の人となりが足音繁く時間軸を追うというよりも、ほとほととまるで足音が聞こえぬかのようにその時を迎えるまで描き尽くされる。(480/1000)