麻雀の誕生 12月 22, 2025 麻雀を子どもたちに教えている立場上、本書は避けて通れない書物だろう。中は頬紅、発は眉墨、白は白粉に起源を持つ。それらは古代中国の宮廷の女官たちのものであり、索子の一が雀であるのも、彼女たちが籠の鳥であったことに由来する等々。これを俗説だと退ける人もいるが、真偽はともかく麻雀が18世紀中国式ドミノゲーム等から始まり、紆余曲折を経て現代の姿に至ったことは意味深い。(526/1000) 続きを読む
自閉症の僕が跳びはねる理由 12月 19, 2025 NHKの特集番組でみて読みたくなった小編だ。今年も来週サンタクロースになって、障害を持った幼児施設を慰問する。自閉症の子ばかりではないが、ギターを掻き鳴らす私やサンタの扮装に逃げ出したり泣き出す子どもたちがいる。そんなシーンに出会うたび心を痛めるのだが、今年は彼等の心にもう少し寄り添えるような気がする。(525/1000) 続きを読む
春告鳥 12月 18, 2025 年末にこんなしみじみとした連作を読むと心が洗われる。一年12ヶ月の暦に女性の運勢を重ね合わせて、武家から町人までさまざまな女性の運命を紡ぐ。前世の業を背負って現世の生き方に慄くかと言えばそうではない。むしろ運命に逆らってまでも、現世を精一杯生きることの大切さを教えてくれる。(524/1000) 続きを読む
精姫様一条 12月 15, 2025 女性の視点からの作品は苦手だなと思いながらも、作者の筆力に惹かれて手に取って正解だった。確かに主人公は女性だが、彼女を取り巻く男たちの武士らしい矜持や気骨は読む者を魅了する。時代小説の世界も女性が旗頭となりつつあるようだ。(523/1000) 続きを読む
東京新大橋雨中図 12月 10, 2025 小林清親という明治初期に生きた画家の半生を描く。作者の巧みな描写力は、まるで絵画の如しだ。江戸から続いて明治に馴染めない元御家人たちや市井の人びとの気持ちを丹念に辿る。さまざまな不幸や不運に見舞われながらも懸命に生きる女たちを、まるで眼前に見えるかのように鮮やかに描き出すのだからたまらない一冊だ。(522/1000) 続きを読む
剛心 12月 04, 2025 建造物には、その重さの中心点を表す重心ともうひとつ、強度を表す重要な中心点「剛心」(center of rigidity)がある。その双方が歪みなく存在してこそ、強く美しく安定した建物になる。というのが、国会議事堂建設の原案と基本理念に関わった妻木頼黄(よりなか)だった。美しい江戸の風景と開化後の西欧化を融合させようとした妻木こそ「剛心」の人だったかもしれない。(521/1000) 続きを読む