スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

定年物語

これから細君と結婚しようかどうかという頃、この作者の「結婚物語」なる本を手にとって読んだ覚えがあったので40年後の「定年物語」に興味をそそられた。ところが読んでみればなんと時代錯誤の主人公(多分作者自身?)。細君に尋ねてみると、「結婚物語」もそうだったわよとのこと。やれやれとんだ470頁であった。 (464/1000)
最近の投稿

北天蒼星 上杉三郎景虎血戦録

上杉景勝、直江兼続のコンビといえば、謙信の志を継いで徳川幕府の時代まで上杉家を存続させた中興の祖と疑わなかったが、北条家から養子として入った景虎こそ謙信の志を継ぎながら兼続等によって弑虐された義の人だった。なんとも悲劇のヒーローを描いた読むのが辛い作品である。(463/1000)

ぼっけもん 最後の軍師 伊地知正治

最後の軍師と呼ばれる人だそうだ。鳥羽伏見の戦い、戊辰戦争、会津戦争と第一線で指揮を取り、西郷や大久保とも一線を画しながら、維新後は後進を育成した。隻眼、不自由な片脚という異形の戦略家でありながら、没落士族のために殖産事業を建白し続けるなど魅力に溢れた維新の英雄である。(462/1000)

六つの村を越えて髭をなびかせる者

タイトルからして、極寒の北海道を探検しアイヌ民族と同化した男の過酷な旅路かと想像したが、最上徳内という実在の人物の一生を辿った記録である。田沼意次、松平定信の両時期に、蝦夷探検に向かった一行の苦難と有為転変がつぶさに描かれているので、知識として座右に置いてみてもよい一冊だ。(461/1000)

二月二十六日のサクリファイス

二・二六事件の真相とは何だったのか、実在した山口一太郎大尉や大谷敬二郎憲兵大尉、本庄繁大将、石原莞爾大佐などを配して主人公の林逸平憲兵軍曹にその核心を追い求めさせる。一部青年将校が起こした戦前の叛乱事件だと片付けられない実に手に汗握る展開だ。大義のために小さな努力を切り捨ててはならない。現代への警鐘でもある。(460/1000)

野望の屍

ヒトラーと石原莞爾を両極にして第二次世界大戦及び太平洋戦争を通観する。ドイツになぜあの独裁者が現れたのか、満州事変を仕組んだ男の思想とは何だったのかについて戦史とともに振り返ることができる。犠牲となった無辜の市民や兵士にではなく、世論や風潮に流される社会にこそその罪を問いたくなる。(459/1000)

亥子ころころ

久しぶりの西條奈加だったが、『まるまるの毬』に勝るとも劣らない出色の出来栄えの作品だ。しかも毬(いが)を継いでの亥子なのだから興趣を掻き立てられる他ない。毬も菓子職人、本作も菓子職人にまつわる親子、師弟、友人の人情と憐憫を扱い、胸を突くシーンは縦横無尽だ。名作に出会える喜びに浸れるのはなんとも贅沢だ。(458/1000)