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9月, 2024の投稿を表示しています

泥の蝶

史上最悪の作戦、白骨街道と呼ばれ、15万の将兵の内80%にあたる12万人が戦死したインパール作戦。加藤操六兵長、丸山寿一自動車隊少尉の2人を軸に作戦の無謀さを描き、最後は山本募などという牟田口に勝るとも劣らない少将の無能力ぶりに怒りさえ湧いてくる。淡々と事実のみを列挙していく本文が悲惨さを倍加させる。(454/1000)

身命を惜しまず

家康とその子紀伊頼房に使えた安藤帯刀、伊達政宗に使えた謀将片倉小十郎について、それぞれ戦乱の移り変わりを足速に描いて人となりを浮き掘らせた作品。目まぐるしく状況の変遷を連ねてあるせいか、焦点がぼやけたしまっている点が惜しまれる。紙数を惜しまず書いて欲しかった。(453/1000)

一夢庵風流記

平成元年に初版が刊行されていたのだから、かれこれ30年以上も知らないままだったとは迂闊だった。こういう破天荒な戦国武将をこそ大河ドラマはなぜ取り上げないのだろうと恨み節を唱えたくなる。甲賀忍者の末裔滝川一益の血を引きながらも、前田利家と縁続きの前田慶次郎の傾奇振りがなんとも痛快だ。(452/1000)

もう一度読みたい 教科書の泣ける名作

宮沢賢治、新美南吉、椋鳩十、土家由岐雄、斉藤隆介、花岡大学、小川未明、あまんきみこ、ストックトン、トルストイ、菊池寛、芥川龍之介等々児童文学者だけでなく大作家までが手がけた名作童話の数々。小学生時代に読んだものも含め、半世紀ぶりに再読してその内容の深さに心が洗われる。(451/1000)

春のとなり

人気作品ということで結構待って手にした一冊。さすがにそれだけの価値ある内容だ。江戸の町の人情や風情が縦横に散りばめながらも、米坂藩内部における薬剤原料に絡む欲望と不正に迫る本筋は着々と究められていく。女主人公と婚家の義父との心の交流が実に温かい。お勧めの一冊だ。(450/1000)

ごんぎつねの夢

冒頭からキツネ面を被った猟銃乱射男が立てこもり緊迫する。男は誰で、なぜ狙撃されなければならなかったのか。新美南吉の童話「ごんぎつね」とはそもそもどんな経緯を経て生み出され、読者に今もどう受け止められているのか?そうした根本的な疑問と対峙しながら、一介の教師が果たしたかった夢とは何なのか。大団円を迎えて真相が明かされる。 (449/1000)

深淵の色は 佐川幸義伝

人は心に力みを持ちやすくできている。しかし、力を入れると相手の力とぶつかってしまう。拮抗し合うばかりでどうにも相手に影響を与えることができない。練習と鍛錬によって力を抜くことで相手の力にぶつからない体験を得られる。合気の達人佐川幸義の奥義がつぶさに語られていて、実に読み応えがある。(448/1000)

ともぐい

タイトルからして不気味だが、読み進むうちに猟師熊爪の原始的な生き方が羨ましくなる。熊との決闘の果てに掴んだ妻子との生活でさえ、彼の達観を覆すことはできなかったという結末が悲愴である。ある意味人間同士の共食いを描いたのかもしれない。(447/1000)

八月の御所グラウンド

直近の直木賞受賞作だからと期待して手にとったのに、こんな出来の作品が受賞するようでは賞の重みも高が知れていると言わざるを得ない。感動の青春小説って何をどう読めば感動するのやら。漫画じゃあるまいし、読者の質も悲しいほど低下しているのが令和の時代か。(446/1000)

塚原卜伝十二番勝負

天の運、時の運、世の運、人の運、成す時の運の五つの運に任せれば自ずから勇気が湧くと卜伝は父から教えられたという。勝負事のみならず人生を生きる上でも、五運に任せる心境に至らねば大業も果たせず、悔恨に苛まれることになるのだろう。代表的な十二番勝負を経て神の境域にまで達した剣豪の成長を追体験できる。(445/1000)