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3月, 2024の投稿を表示しています

汚名

広島を舞台に医者としての使命を果たした平野真太郎、疫病蔓延の根本対策として上水道敷設に尽力した半田健夫広島市長。幕末の贋金作りという罪業をを背負いながら、贋金を正貨に転換させる結果をもたらした二人の人生。水は水、金は金、という思想が当時の民衆を救ったが、その後の広島の悲劇を考えると、素直に頷けないのも真実だ。(410/1000)

敗れざる幕末

どこかで聞いたことのある作家名だなと思ったが、あの「もう頰づえはつかない」の作者だったとは。その後、頼山陽を中心にして著作し、このような頼山陽周辺にいた関藤藤陰と老中阿部正弘に光をあてた。阿部の人柄、功績に加え生涯を阿部一族に捧げた関藤(石川)の直向きな生き方に感動させられる。(409/1000)

生きるぼくら

さすがにここまで読書感想文推薦図書風に描かれすぎた内容だとちょっと引いてしまう。自然農法での米作りが引きこもりの青年に希望を与えたという設定なのだが、現実社会はもっと過酷だろう。世の中高潔な人ばかりではないということが、諦めでもあり救いでもある。(408/1000)

翼をください

アメリア・イアハート効果という用語は、切り口を変えることで1位のブランド称号を手に入れることだそうだ。実在した女性飛行士アメリア・イアハートの世界一周飛行は、太平洋上で失踪する結果となったが、実はその後の日本の世界一周飛行の立役者となったとする仮説に基づく小説だ。女性という切り口で見れば確かに彼女は1位のパイロットであろうが、そうでなくても永遠に名を残す先駆者だと言えるだろう。(407/1000)

奇跡の人

スクールガードの仲間が一年生の小学生から「クソシジイ」と呼ばれたことに腹を立てたことが教師に伝わり、担任が当該一年生二人の少女を連れてきて謝罪させた。謝るべきは教育者たる担任であるべきだろうと教頭に談判しに行ったら、「本校の教育方針は自己責任だ」と強弁した。本書で三重苦の娘に平手打ちをしようとした父の手を代わって受けた去場安先生を学ぶがいい。涙なくして読めない。座右の書としていつまでも読み返したい一冊だ。(406/1000)

暗幕のゲルニカ

美術作品に関心のある人なら誰しも、初めてピカソの「ゲルニカ」を見たら衝撃を受けた記憶があるだろう。この絵画が生まれた時代背景とピカソ自身の苦悩、絵画を守り通した人々の努力が並行して描かれる一方、9.11とアメリカのイラク侵攻に抗するために、ニューヨーク近代美術館が国外不出の掟に挑戦してとった措置が織り合わされる。必読の一冊だ。(405/1000)

遠い他国でひょんと死ぬるや

なんと総括すればよいのだろう。フィリピン戦線で戦死した竹内浩三の足跡を求めて、自ら同地に向かったはいいが、物語の展開は奇想天外すぎて引いてしまう。結局何を読者に伝えたいのかよくわからないまま「ひょんと」終わってしまうのだが、そのあたりがこの作家の真骨頂なのかもしれない。 (404/1000)

アメリカ最後の実験

音楽好きもしくは音楽に携わる者にはたまらない一冊だろう。音楽になにができるか、未来に希望の見えない現代において、今後音楽はどうあるべきかを問う。ピアノの平均律と純正律の違いなど音楽理論も知らず知らず学べたりして、この作品こそ実験的と言えるかもしれない。(403/1000)

恩送り

さすがというべきだろう。江戸の街を舞台にした捕物帳の体を取りながら、人間の深奥に潜む心の揺らぎを余すところなく描いてくれている。文体にも馴染んできて、この作家が実は現代の時代小説の気鋭の人であることも頷ける。まだまだ読みたい作家の一人だ。(402/1000)

反応しない練習

中学校中退、家出放浪の末、大検で東大法学部を卒業し政策シンクタンクに勤め出家した異色の人物だ。悪しき心、回避したい邪念に結びつくような現実の事象には「反応しないこと」が肝要だと説いてくれる。日々他者との交流、社会貢献のみに生きがいを見つけた自分自身にとっても指針となるテーマであった。(401/1000)