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10月, 2023の投稿を表示しています

兵諌

前作で指摘した通りになるが、本作は出来のよい部類に入るだろう。皮肉だが、本作がニ・ニ六事件で蹶起玉砕した将校等と国共合作の為一命を賭して蒋介石を兵諌した張作霖等とを対比させる。中国人にあって日本人にないもの。自浄能力というものがこの国の国民にあったら、我々が嘆息する日々ももっと少なかろう。(367/1000)

長く高い壁

この作者は面白い作品とそうでない作品とのギャップが大きいようだ。昭和初期の満州で起きた兵士殺人事件を、小説の主人公としてはまったく捉えどころのない人物を中心に謎解きさせるのだが、何を描こうとしているのか意味不明だ。(366/1000)

残夢の骸 満州国演義 (九)

小説は歴史の奴隷ではないが、また歴史も小説の玩具ではない。と言った筆者の言葉にナポレオン・ボナパルトの言葉がさらに重ねられる。「歴史とは暗黙の諒解の上に出来上がった嘘の集積である」。全九巻をようやく読み終えて、これら筆者のあとがきの言葉が本書を象徴する。昭和、平成、令和と生きてきた者には重く響くに違いない。

珍妃の井戸

清朝末期のこの時代を描いた作品というのは初めてで実に面白かった。第十一代光緒帝の側室珍妃を誰が殺したのかを、史実通り西太后ではなく真犯人を求めて物語は展開する。日本をはじめとする列強八カ国に侵食され尽くしていく韃靼族を起源とする満州清朝。この王朝の盛衰がなければあの大東亜戦争という愚かな歴史もなかったかもしれない。(365/1000)

不死身の特攻兵

特攻隊シリーズだが、今では絶版の高木俊朗による『陸軍特別攻撃隊』の抜粋によって、9回出撃して9回とも帰還した佐々木友次さんのことや、振武寮に囚われた大貫健一郎(ミュージシャンの大貫妙子の父)のことが描かれる。志願という名の強制、日本的ムラ社会の同調圧力など、今もこの国に隠然と居座る悪弊がクローズアップされる。(364/1000)

毎日が日曜日

なんだかんだと忙しくて本を読む時間すらなかなかなかった。定年後の「毎日が日曜日」という仮説がまったく他人事にしか思えない幸せな毎日だが、昭和の終わり頃の日本のサラリーマンはこんな感じだったのだろうと想像できる。いや待てよ、もしかすると令和のこの時代も同じかも知れぬ。EVERYDAY WEEKEND を率いるバンドリーダーとしてはアイロニカルだ。(363/1000)

さむらい劇場

図書館が10日ばかり休館とわかって、久しぶりにブックオフで三冊買い求めた。池波正太郎はすでに14冊も読んでいるのに、こんな本があるとは知る由もなかった。榎平八郎という幕臣の三男坊の破天荒な物語だが、若者がどう成長していくものかが自分のことのように思えて面白く読める。所詮人間とは食べて寝て女と暮らし子を儲けて家を守るものだ。偉い奴もそうでない奴も皆同じだという作者の達観が素直に頷ける。(362/1000)