精姫様一条 12月 15, 2025 女性の視点からの作品は苦手だなと思いながらも、作者の筆力に惹かれて手に取って正解だった。確かに主人公は女性だが、彼女を取り巻く男たちの武士らしい矜持や気骨は読む者を魅了する。時代小説の世界も女性が旗頭となりつつあるようだ。(523/1000) 続きを読む
東京新大橋雨中図 12月 10, 2025 小林清親という明治初期に生きた画家の半生を描く。作者の巧みな描写力は、まるで絵画の如しだ。江戸から続いて明治に馴染めない元御家人たちや市井の人びとの気持ちを丹念に辿る。さまざまな不幸や不運に見舞われながらも懸命に生きる女たちを、まるで眼前に見えるかのように鮮やかに描き出すのだからたまらない一冊だ。(522/1000) 続きを読む
剛心 12月 04, 2025 建造物には、その重さの中心点を表す重心ともうひとつ、強度を表す重要な中心点「剛心」(center of rigidity)がある。その双方が歪みなく存在してこそ、強く美しく安定した建物になる。というのが、国会議事堂建設の原案と基本理念に関わった妻木頼黄(よりなか)だった。美しい江戸の風景と開化後の西欧化を融合させようとした妻木こそ「剛心」の人だったかもしれない。(521/1000) 続きを読む