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5月, 2025の投稿を表示しています

刀と傘

さまざまなイベントが続いてゆっくり読書する暇もなかったが、漸く読み終えたのがこの一冊。明治初期、司法卿にまで昇り詰め、佐賀の乱で散った江藤新平と盟友鹿野師光を軸とした推理小説だ。5つの殺人事件を通して彼ら二人の関係がどう変化していくのか、草創期の明治政府がどう変遷していくのかがよく理解できる。(492/1000)

いのちの波止場

終末医療、緩和ケアに委ねられた患者5名、5通りの最期を看取る物語だ。看護師の立場、医師の立場、家族の感情、なによりも患者自身の死を前にしたさまざまな心の変化を読み取ることができる。この数年で彼岸へ旅立った両親の終末期のことが嫌が上にも思い出されて心が痛む。(491/1000)

路地裏のニ・二六

ニ・二六事件が引き起こされるまでの将校絡みの複数の事件を結びつける一憲兵の分析と行動を軸に物語は展開する。それぞれが別個の事件と思われたものが密接に結びついていく過程がスリル満点だ。皇道派と統制派の鬩ぎ合いと言ってしまえば簡単だが、当時の国情や人間のものの考え方はさほど単純ではない。人間にできることは高が知れている、とは蓋し名言だ。(490/1000)

光炎の人 (上)(下)

上下巻併せて約800頁に及ぶ大作だった。明治から昭和にかけて電気の開発普及に尽力した立志伝ものかと手に取ったが、豈図らんや技術に取り憑かれた男の非情で目を背けたくなる生き様だった。結末は軍部に利用されて非業の最期を遂げるのだが、一方向にのみ目が向きがちな己にとっても教訓となる作品だ。(489/1000)